内視鏡検査大腸癌
大腸カメラ検査前の下剤飲み方〜医師が教える10のコツ
大腸カメラ検査前の下剤はなぜ必要?その重要性を解説
大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)は、大腸がんの早期発見や様々な消化器疾患の診断に欠かせない重要な検査です。しかし、多くの患者さんが検査前の下剤服用に不安を感じています。
「あの量の下剤を全部飲めるだろうか」「味が苦手で飲めるか心配」という声をよく耳にします。私も消化器内視鏡専門医として数多くの患者さんから同様の相談を受けてきました。
大腸カメラ検査では、腸内をきれいにして観察することが必須です。腸内に便が残っていると、小さなポリープや早期の病変を見逃してしまう可能性があるからです。つまり、下剤による腸管洗浄は検査の精度を左右する極めて重要なステップなのです。

今回は消化器内視鏡専門医として、大腸カメラ検査前の下剤の飲み方について、実際の臨床経験に基づいた10のコツをご紹介します。これらのコツを実践すれば、検査前の不安を軽減し、より快適に準備を進めることができるでしょう。
大腸カメラ検査前の下剤の種類と特徴
大腸カメラ検査前に使用する下剤(腸管洗浄剤)には、いくつかの種類があります。それぞれ特徴が異なるため、患者さんの状態や好みに合わせて選択することが重要です。
当院では主に以下の下剤を使用しています。それぞれの特徴を理解して、自分に合った下剤を選ぶ参考にしてください。

モビプレップ
モビプレップは現在最も広く使用されている下剤の一つです。水に溶かして飲む粉末タイプで、レモン風味がついています。
特徴としては、従来の下剤より飲む量が少なく済む点が挙げられます。具体的には、1リットルを飲んだ後に水やお茶などを500ml飲むという方法で使用します。便がほぼ透明になれば、残りを飲む必要はありません。
味はさっぱりとしていて比較的飲みやすいと感じる方が多いですが、個人差があります。腎臓に疾患をお持ちの方は使用できない場合がありますので、事前に医師に相談してください。
ニフレック
ニフレックも水に溶かして飲むタイプの下剤です。2リットルを約2時間かけて飲みます。服用方法がシンプルで、腸管内の残渣が少なくなるため正確な検査が期待できます。
レモン風味の特有の味があり、個人によっては飲みにくいと感じることがあります。最初の2〜3杯は15分以上かけてゆっくり飲むことがポイントです。
サルプレップ
サルプレップはペットボトル入りの製剤をそのまま飲むタイプの下剤です。薬液はレモン風味で、薬剤を溶かす手間が不要な点が特徴です。
480mlを30分かけて飲み、その間に飲んだ薬の倍量の水分を摂取します。最大960mlまでの服用を行います。後味に苦味を感じることがあるため、個人によっては飲みにくいと感じる場合があります。
その他にも、マグコロールP、ビジクリア(錠剤タイプ)、ピコプレップなど様々な種類があります。当院では患者さんの年齢、日々の排便状況、既往症をもとに最適な下剤を提案しています。
どうですか?自分に合った下剤があるかもしれないと思いませんか?
大腸カメラ検査前の下剤を飲みやすくする10のコツ
下剤の服用は大腸カメラ検査の成功に不可欠ですが、多くの方が苦手意識を持っています。長年の臨床経験から、下剤をより飲みやすくするための10のコツをご紹介します。
コツ1:検査前日の食事を工夫する
検査前日の食事は、消化の良いものを選びましょう。具体的には、うどん、そうめん、白米、おかゆ、パン類(雑穀、ライ麦、ドライフルーツが入っていないもの)、卵、豆腐、肉、魚などがおすすめです。
逆に避けるべき食品は、そば、ラーメン、胚芽米、発芽玄米、雑穀米、野菜全般、果物全般、豆類、こんにゃく、キノコ類、海藻類、ネギなどの薬味類、ごま、ナッツ類、納豆、ふりかけ、ジャム、野菜ジュース、青汁、乳製品です。これらは消化に時間がかかり、腸内をきれいにする妨げになります。
食事制限を適切に行うことで、検査当日の下剤の効果が高まり、飲む量を減らせる可能性があります。
コツ2:下剤を冷やして飲む
下剤は冷蔵庫で軽く冷やすと、においや味のクセが軽減されて飲みやすくなります。特に夏場は冷やした方が飲みやすいと感じる方が多いです。
ただし、あまり冷やしすぎると腸の動きが鈍くなる可能性があるため、キンキンに冷やすのではなく、軽く冷やす程度にしましょう。
コツ3:少量ずつゆっくり飲む
下剤は一気に飲もうとせず、コップ1杯(約180ml)を10〜15分かけてゆっくり飲むのがコツです。急いで飲むと吐き気を催しやすくなります。
特に最初の1〜2杯は時間をかけて飲み、体を慣らしていくことが大切です。焦らず、マイペースで進めましょう。
コツ4:飲みながら水やお茶で口をすすぐ
下剤を飲んだ後、水やお茶(糖分の入っていないもの)で口をすすぐと、口に残る下剤の味が軽減され、次の一杯も飲みやすくなります。
特に味に敏感な方は、一口飲んだら一口水やお茶を飲む、というサイクルを作ると良いでしょう。口の中をリフレッシュすることで、最後まで飲み切る助けになります。

コツ5:ストローを使って飲む
ストローを使って飲むと、下剤が直接舌に触れる量が減るため、味を感じにくくなります。特に味に抵抗がある方におすすめの方法です。
ストローの先端を舌の奥の方に置いて飲むと、さらに味を感じにくくなります。ただし、あまり奥に入れすぎると喉に違和感を覚えることがあるので注意しましょう。
コツ6:レモンや塩を活用する
下剤を飲む前に、レモン汁を少し舐めたり、塩を少量舌に乗せたりすると、味覚が一時的に変化し、下剤の味を感じにくくなることがあります。
また、下剤を飲んだ後にレモンスライスを軽く噛むと、口の中の下剤の味が中和されて次の一杯が飲みやすくなります。
コツ7:リラックスした環境で飲む
テレビを見たり、音楽を聴いたり、好きな本を読んだりしながら飲むと、気が紛れて飲みやすくなります。リラックスした状態で飲むことが大切です。
また、家族や友人と会話しながら飲むのも良い方法です。緊張していると胃腸の動きが悪くなるため、リラックスすることで下剤の効果も高まります。
コツ8:適度に動き回る
下剤を飲んでいる間、ずっと座っているだけでなく、時々立ち上がって室内を歩き回ると腸の動きが活発になります。特に便秘気味の方は、適度に体を動かすことで下剤の効果が高まります。
ただし、激しい運動は避け、軽い歩行程度にとどめましょう。
コツ9:下剤の種類を相談する
下剤の種類によって、量や味、飲みやすさが異なります。過去に下剤を飲んで辛かった経験がある方は、医師に相談して別の種類の下剤に変更できないか相談してみましょう。
当院では患者さんの状態や好みに合わせて、最適な下剤を提案しています。遠慮なく相談してください。
コツ10:心の準備をしっかりと
「大腸カメラのための大切な準備」と前向きに捉えることが重要です。下剤を飲むことで検査の精度が上がり、小さな病変も見つけやすくなります。
「この下剤を飲むことで、自分の健康を守るための大切な一歩を踏み出している」という気持ちで臨みましょう。
下剤の効果的な飲み方と時間配分
下剤をただ飲むだけでなく、効果的な飲み方と適切な時間配分を知ることで、より快適に検査準備を進めることができます。ここでは、代表的な下剤であるモビプレップを例に説明します。
モビプレップは、検査当日の朝に服用するのが一般的です。大腸カメラ検査の予約時間の5時間前から飲み始めるのが理想的です。
モビプレップの効果的な飲み方
まず、バッグに水を入れてふたを閉め、上から押して2つの粉薬(A剤とB剤)を混合し、よく振って粉薬を溶かします。そして、合計2リットルとなるように水を足します。
モビプレップをコップ1杯(180ml)につき10〜15分間隔で、1杯ずつ飲みます。一気に飲もうとせず、ゆっくりと時間をかけて飲むことがポイントです。
モビプレップを1リットル飲み終わったら、水またはお茶を500ml程度飲みます。水やお茶は、モビプレップを飲んでいる最中に口直しとして飲んでも構いません。
このモビプレップ1リットルを飲んで、便がほぼ透明になったら下剤の服用は終了です。透明にならない場合は、残念ながら残ったモビプレップを引き続き飲む必要があります。
同様に、モビプレップコップ1杯を10〜15分間隔で、1杯ずつ飲みます。モビプレップを500ml飲み終わったら、水またはお茶を250mlほど飲みます。
このモビプレップ500mlを飲み終わって、便がほぼ透明になったら下剤の服用は終了です。それでも透明にならない場合は、医療機関に相談してください。
下剤服用後の注意点
下剤を飲み始めると、通常1〜2時間程度で効果が現れ始めます。最初のうちは普通の便が出ますが、徐々に水様便に変わっていきます。最終的には、ほぼ透明な液体のような便になれば準備完了です。
下剤服用中は、トイレに何度も行く必要があるため、トイレの近い場所で過ごすことをおすすめします。また、肛門周囲が刺激で痛くなることがあるため、やわらかいトイレットペーパーを用意したり、おしりふきを使用したりすると良いでしょう。
下剤服用後は脱水になりやすいため、水分(水またはお茶)を十分に摂ることが重要です。ただし、検査の2時間前からは水分摂取も控えるよう指示されることが多いので、医師の指示に従ってください。
下剤服用中のトラブル対処法
下剤服用中にはさまざまなトラブルが起こる可能性があります。ここでは、よくある問題とその対処法をご紹介します。
吐き気が起きた場合
下剤を飲んでいると吐き気を感じることがあります。その場合は、いったん服用を中断し、深呼吸をして落ち着きましょう。5〜10分ほど休憩した後、少量ずつゆっくりと再開してみてください。
それでも吐き気が強い場合は、冷たいおしぼりを首の後ろに当てたり、レモンの香りをかいだりすると和らぐことがあります。どうしても飲めない場合は、無理をせず医療機関に相談してください。
腹痛が起きた場合
下剤の効果で腸が活発に動くため、腹痛を感じることがあります。軽い腹痛であれば心配ありませんが、強い痛みの場合は服用を一時中断し、横になって休みましょう。
腹部を温めると痛みが和らぐことがあります。痛みが強く続く場合は、医療機関に連絡してください。
便が透明にならない場合
指示された量の下剤を全て飲んでも便が透明にならない場合があります。特に普段から便秘気味の方に多いトラブルです。
このような場合は、追加で下剤を飲む必要があるかもしれません。自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。場合によっては、検査時間を遅らせたり、別の日に変更したりすることもあります。
肛門周囲の痛みがある場合
下剤の効果で何度もトイレに行くうちに、肛門周囲が刺激されて痛みを感じることがあります。その場合は、トイレットペーパーでこすらず、おしりふきやぬるま湯で優しく洗い流しましょう。
市販のワセリンやデリケートゾーン用のクリームを塗ると症状が和らぐことがあります。痛みが強い場合は医療機関に相談してください。
脱水症状が現れた場合
下剤の効果で大量の水分が失われるため、脱水症状を起こすことがあります。めまい、極度の喉の渇き、尿量の減少、皮膚の乾燥などの症状が現れたら、水やお茶などの水分を積極的に摂取してください。
特に高齢の方や基礎疾患をお持ちの方は脱水に注意が必要です。症状が改善しない場合は医療機関に連絡してください。
大腸カメラ検査当日の流れと心構え
下剤の服用を終え、いよいよ大腸カメラ検査の当日を迎えます。ここでは、検査当日の流れと心構えについてご説明します。
検査当日の受付から検査までの流れ
まず、予約時間に医療機関に到着したら受付を済ませます。その後、検査着に着替えるよう案内されます。当院では、上下ともに1回使い切りの大腸カメラ専用の検査着を用意しています。
着替えが済んだら、医師による最終確認があります。腸の洗浄状態や体調、既往歴などを確認します。この時に不安なことや質問があれば、遠慮なく相談してください。
検査前に、鎮静剤や鎮痛剤の使用について相談することもできます。当院では、患者さんの希望に応じて「眠ってできる内視鏡検査」も行っています。
検査中の心構えと注意点
検査中は、医師の指示に従って体の向きを変えたり、呼吸を整えたりすることがあります。これは、内視鏡をスムーズに進めるためのものです。
検査中に多少の不快感や圧迫感を感じることがありますが、痛みを感じたら遠慮なく医師に伝えてください。無理に我慢する必要はありません。
検査時間は個人差がありますが、通常15〜30分程度です。ポリープなどが見つかり、その場で切除する場合は、さらに時間がかかることがあります。
検査後の過ごし方
検査後は、しばらく休憩室で休んでから帰宅することになります。鎮静剤を使用した場合は、その効果が切れるまで医療機関で休憩し、安全を確認してから帰宅します。
検査当日は、アルコールの摂取を控え、激しい運動も避けましょう。また、ポリープを切除した場合は、出血のリスクがあるため、医師の指示に従った生活を心がけてください。
検査結果については、その場で簡単な説明を受けることができますが、詳細な結果や今後の治療方針については、後日の診察で説明を受けることが一般的です。
まとめ:大腸カメラ検査を成功させるために
大腸カメラ検査前の下剤の飲み方について、10のコツを中心にご紹介してきました。最後に、重要なポイントをまとめておきましょう。
大腸カメラ検査は、大腸がんの早期発見や様々な消化器疾患の診断に欠かせない重要な検査です。そして、その検査の精度を左右するのが、下剤による腸管洗浄です。
下剤を飲むのは確かに大変ですが、適切な準備と工夫によって、その負担を軽減することができます。検査前日の食事制限、下剤を冷やす、少量ずつゆっくり飲む、水やお茶で口をすすぐ、ストローを使う、リラックスした環境で飲むなど、様々な工夫を試してみてください。
また、下剤の種類も複数あり、それぞれ特徴が異なります。過去に下剤で辛い思いをした方は、別の種類の下剤に変更できないか医師に相談してみることをおすすめします。
大腸カメラ検査は、あなたの健康を守るための大切な一歩です。検査前の準備を適切に行うことで、より正確な検査結果を得ることができます。
当院では、患者さん一人ひとりの状態や希望に合わせて、最適な検査方法を提案しています。大腸カメラ検査に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの健康を守るお手伝いをさせていただきます。
詳細は浜野胃腸科外科医院までお気軽にお問い合わせください。経験豊富な消化器内視鏡専門医が、あなたの不安を解消し、安心して検査を受けていただけるようサポートいたします。
著者プロフィール
浜野 徹也(はまの てつや)
現職
浜野胃腸科外科医院 副院長(2015年就任)


