COLON CANCER 大腸癌
日本における大腸癌の現状
日本において大腸癌は年々増加傾向にあり罹患数は年間13万人を超え、それとともに死亡数も増加傾向で、現在では毎年おおよそ5万人の方が大腸癌により命を落としています。
癌に伴う死亡者数のうちで大腸は男女合わせて3番目に多い臓器となっており、女性においては1番多い臓器となっています(左:罹患数、右:死亡数)。
大腸癌の症状
どの臓器の癌でも同様ですが、ほとんどの場合早期の癌に症状はありません。
大腸癌の場合進行してくると、腹痛、血便、下痢や便秘などの排便習慣の変化といった症状が出てきますが、診断時に有症状となる割合は40%程度にすぎず、無症状で検診により発見される場合が多いです。さらに進行してしまうと肝臓への転移による黄疸などの症状が現れてきます。転移の症状により診断される場合も10%程度認められます。
つまり、毎年の定期検診を続けていただくことと、検診で陽性になった場合にきちんと精密検診を受けていただくことが、大腸癌発見には大切なのです。
大腸癌の原因(大腸癌と大腸ポリープの関係)
大腸の発癌様式には、ⅰ)正常大腸粘膜から腺腫を経て癌化するadenoma-carcinoma sequence発癌、ⅱ)リンチ症候群や家族性大腸腺腫症といった遺伝性大腸癌、ⅲ)正常大腸粘膜から発癌するde novo発癌、ⅳ)潰瘍性大腸炎などの炎症性粘膜からの発癌、の4通りが考えられています。
大腸癌の多くはⅰ)のadenoma-carcinoma sequence発癌の経路をたどるとされています。この場合腺腫の段階で腫瘍を切除すれば大腸癌死亡率を下げることができます(N Eng J Med. 2012; 366(8): 687-696)。
また、大腸癌全体のうち5%程度を占めていると言われているⅱ)の遺伝性大腸癌は、血縁者に50歳未満と若くして大腸癌だけでなく子宮癌・卵巣癌・乳癌・腎盂尿管癌を発症された方がいらっしゃる場合に注意が必要です。
また、食事の欧米化が大腸癌増加の原因と言われることがあります。下記の大腸発癌危険因子をみると、赤肉(牛肉や豚肉、羊肉など)や加工肉が危険因子としてあげられてもいます。
しかし大腸癌の死亡数は2021年には米国より日本の方が多くなってしまってしまいました(総人口:米国3億3290万人、日本1億2610万人)。日本のほうが大腸癌で亡くなっている方が多いという事実をみると、食事の欧米化は大腸癌増加の一因に過ぎないものと考えるべきです。
大腸癌の予防
米国では、1980年代後半から大腸癌罹患数が減少、それに応じて死亡数を減少させることに成功しています。
この大きな理由は癌検診受診率の向上によるものとの調査結果があります(Cancer. 2010; 116(3): 544-573)。
特に大腸カメラ検査(下部消化管内視鏡検査)により、まだ良性の状態で腫瘍を発見して治療することが、大腸癌への進展を予防でき、大腸癌罹患数を減らすことができると証明されています。
日本で行われている大腸癌検診は便潜血法によるもので、これはこれで有用なものですが、日本の癌検診は癌死亡率の低下を目指したものであり、癌の早期発見や罹患数の低下を目指したものではないということを認識しなくてはなりません。よって現状では、便潜血による大腸癌検診で、陽性になった方は必ず大腸カメラ検査で精密検診をうけていただき、陰性になった方は大腸カメラ検査をオプションで用意している人間ドックなどを上手に活用していただきたいと考えます。
大腸癌の予後
癌は発見が遅くなればなるほど進行してしまい、命が助からない状態になってしまいます。つまり癌が見つかった時の進行度(ステージ)でその後の予後(どれくらい生きられるか)が決まります。
大腸癌の場合、早期のstageⅠでみつかれば95%以上の方は大腸癌で亡くなることは避けられますが、進行してしまったstageⅣで見つかった場合は80%以上の方がその後5年以内で亡くなってしまいます。
大腸癌の治療
ステージによって選択する治療が異なります。早期のなかでもリンパ節転移のないものは内視鏡的に切除します。リンパ節転移のリスクがある早期癌や進行がんはリンパ節郭清が可能な外科的手術となります。遠隔転移がある場合は外科的に加え化学療法(抗がん剤治療)が適応となり、また最近では、肛門に近い直腸癌では、手術の前に放射線化学療法が選択されることも多くなってきており、色々な方法が組み合わされて治療が行われています。
浜野胃腸科外科における大腸癌への対応
当院は「胃癌/大腸癌で亡くなる方をゼロにしたい」という目標に向かって、質の高い内視鏡検査を提供し続けることを目指しています。
癌を発見することに加え、当院では大腸癌の内視鏡治療に対応しております。
当院における内視鏡治療はこちら
大きさや形態によっては治療による出血や穿孔(腸に穴が開くこと)の危険があるため、そのような病変が見つかった場合には入院治療が可能な病院を紹介して治療してもらっています。
血便や腹痛、便通異常などの症状がある方だけでなく、大腸癌の手術後や大腸ポリープを切除した後で定期的な検査が必要と言われている方も対応しておりますので、遠慮なくご相談ください。
ご予約はこちらまた、当院では自覚症状がなくても人間ドックとしての胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)や大腸カメラ検査(下部消化管内視鏡検査)も行なっております。ご興味のある方はご相談ください。