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腹痛と下痢が同時に起きる原因と対処法|医師が解説

腹痛と下痢が同時に起きる原因とは?
腹痛と下痢が同時に起こると、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。この症状は多くの方が経験するものですが、なぜ同時に起こるのでしょうか。
腹痛と下痢が同時に起こる主な原因は、腸の動きが活発になり過ぎることにあります。通常、食事をすると胃や十二指腸で消化され、小腸や大腸を通過する間に必要な栄養素と水分が吸収されます。しかし、何らかの原因で腸の動きが過剰になると、水分が十分に吸収されないまま便が排出され、下痢となるのです。
同時に起こる腹痛は、腸の収縮やけいれん、炎症などによって引き起こされます。つまり、腸の異常な動きが下痢と腹痛を同時に引き起こす主な要因なのです。
腹痛と下痢を同時に引き起こす4つの主な原因
腹痛と下痢が同時に起こる原因は大きく分けて4つあります。それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。
1. 食事関連の原因
食べ過ぎや飲み過ぎは、消化不良を引き起こすことがあります。消化しきれない食物が腸を刺激し、腸の動きが速くなると、水分が十分に吸収されず下痢となります。また、辛い食べ物やアルコールなどの刺激物も腸を刺激し、腹痛や下痢を引き起こすことがあります。
食中毒も重要な原因の一つです。ノロウイルスやO-157などの病原体が付着した食物を摂取すると、これらが腸で増殖し、炎症を起こしたり毒素を出したりします。体はこれらの有害物質を排出するために腸からの分泌物を増やし、水様性の下痢と腹痛を引き起こします。
2. ストレスと自律神経の乱れ
腸の動きは自律神経によって調整されています。強いストレスや緊張を感じると、自律神経のバランスが乱れ、腸の動きが過剰になることがあります。これにより、腹痛と下痢が同時に起こることがあるのです。
特に重要な試験や大事な会議の前など、緊張する場面で突然お腹が痛くなり、下痢を起こした経験がある方も多いのではないでしょうか。これは「過敏性腸症候群」の典型的な症状の一つです。
3. 感染症
感染性胃腸炎は、腹痛と下痢を同時に引き起こす最も一般的な原因の一つです。ウイルスや細菌による感染で、腸の粘膜に炎症が起き、腹痛と下痢を引き起こします。
特にノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎では、突然の腹痛と水様性の下痢が特徴的です。また、細菌性の食中毒でも同様の症状が見られることがあります。これらの感染症は、通常数日から1週間程度で自然に回復することが多いですが、脱水症状には注意が必要です。
4. 消化器系の疾患
過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、虚血性腸炎などの消化器系の疾患も、腹痛と下痢を同時に引き起こす原因となります。
これらの疾患では、腸の機能に何らかの異常があり、慢性的または急性的に腹痛と下痢が起こります。特に炎症性腸疾患では、血便を伴うこともあり、適切な治療が必要です。
腹痛と下痢が同時に起きた時の対処法
腹痛と下痢が同時に起きた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。症状の程度や原因によって対処法は異なりますが、基本的な対応方法をご紹介します。
自宅でできる対処法
まずは楽な体勢を見つけることが大切です。お腹をかばうように猫背になることで、腹部の圧迫を減らし、痛みを和らげることができる場合があります。
また、お腹を温めることも効果的です。カイロや湯たんぽを使用する場合は、低温やけどに注意しながら、腹部を優しく温めましょう。温めることで腸の痙攣を和らげ、血行を促進して痛みを軽減できることがあります。
水分補給の重要性
下痢が続くと脱水症状を起こすリスクがあります。適切な水分補給が非常に重要です。ただの水だけでなく、電解質(ナトリウムやカリウムなど)のバランスを整えるための経口補水液を摂ることをお勧めします。
市販の経口補水液を利用するか、砂糖と塩を少量加えた水(1リットルの水に対して砂糖大さじ4〜6杯、塩小さじ1/2杯程度)で代用することもできます。少量ずつ、こまめに摂取することがポイントです。
食事の工夫
症状がある間は、消化に優しい食事を心がけましょう。白米やうどん、じゃがいも、バナナ、りんごなど、消化がよく刺激の少ない食品を選びます。少量ずつ、回数を分けて食べることも大切です。
辛い食べ物、脂っこい食べ物、乳製品、カフェイン、アルコールなどは避けましょう。これらは腸を刺激し、症状を悪化させる可能性があります。
市販薬の利用
症状が軽度で、原因が明らかな場合(例:食べ過ぎや一時的なストレスなど)は、市販の整腸剤や止痢薬を利用することも一つの方法です。ただし、感染性の下痢の場合は、下痢止めを使用すると病原体を体内に留めてしまう可能性があるため、注意が必要です。
薬の使用に不安がある場合は、薬剤師や医師に相談することをお勧めします。特に、高熱や血便を伴う場合は、自己判断での薬の使用は避け、医療機関を受診しましょう。
医療機関を受診すべき症状とは
腹痛と下痢が同時に起きた場合、どのような症状があれば医療機関を受診すべきでしょうか。緊急性の高い症状から、様子を見ても良い症状まで、受診の目安を解説します。
すぐに受診すべき緊急性の高い症状
以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 突発的な強い腹痛が30分以上続く場合
- 時間経過とともに痛みが徐々に悪化している場合
- お腹が腫れていたり硬くなっている場合
- 激しい痛みに続いて頻回の吐き気や嘔吐がある場合
- 冷や汗や顔面蒼白を伴う場合
- 38℃以上の高熱がある場合
- 意識状態が悪い場合
- 痛む場所が右下腹部に移動してきた場合(虫垂炎の可能性)
- 便に血が混じる、または黒い便が出る場合
かかりつけ医に相談すべき中程度の症状
以下のような場合は、かかりつけ医に相談することをお勧めします。
- 乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方の場合
- 糖尿病患者で食事が取れなくなった場合(薬やインスリンの調整が必要)
- いつもと違う腹痛を感じる場合
- 下痢が2〜3日以上続く場合
- 軽度の脱水症状(喉の渇き、尿量減少)がある場合
様子を見ても良い症状
以下のような場合は、自宅で様子を見ても良いでしょう。
- 以前に経験したことのある似たような痛み方で、その時も自然に治った場合
- お腹全体が痛く、痛みの場所が特定できない場合
- 痛みが一時的で、自然と消えていく場合
- 軽度の下痢で、他の症状を伴わない場合
ただし、症状が長引く場合や悪化する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。自己判断が難しい場合も、医師に相談することをお勧めします。
腹痛と下痢が同時に起きる主な疾患
腹痛と下痢が同時に起きる背景には、様々な疾患が潜んでいることがあります。ここでは、代表的な疾患について解説します。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌による感染で起こる胃腸の炎症です。ノロウイルス、ロタウイルス、サルモネラ菌、カンピロバクターなどが原因となります。
主な症状は、突然の腹痛、水様性の下痢、吐き気、嘔吐、発熱などです。通常は数日から1週間程度で自然に回復しますが、脱水症状には注意が必要です。特に乳幼児や高齢者は重症化しやすいため、早めの受診をお勧めします。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、腸の機能に異常があり、腹痛や腹部不快感、便通の異常(下痢や便秘)を引き起こす疾患です。器質的な異常は見られませんが、腸の過敏性が高まっている状態です。
ストレスや食事、ホルモンバランスの変化などが症状を悪化させることがあります。下痢型、便秘型、混合型、分類不能型に分けられ、下痢型では腹痛とともに下痢が主な症状となります。
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎とクローン病が含まれます。どちらも腸に慢性的な炎症が起こる疾患で、原因は完全には解明されていません。
潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができ、血便や粘液便、下痢、腹痛などの症状が現れます。クローン病では、口から肛門までの消化管のどの部分にも炎症が起こり得ますが、特に小腸や大腸に多く見られます。腹痛、下痢、体重減少、発熱などの症状が特徴です。
どちらも国の指定難病ですが、適切な治療によって症状をコントロールすることが可能です。
虚血性腸炎
虚血性腸炎は、腸への血流が一時的に減少または途絶えることで起こる疾患です。主に高齢者に多く、動脈硬化が主な原因とされています。
左側腹部から下腹部にかけての痛み、下痢、血便が主な症状です。腹痛は突然始まり、非常に強い場合があります。多くの場合は1〜2週間で自然に回復しますが、重症例では入院治療が必要になることもあります。
腹痛と下痢の予防法と日常生活での注意点
腹痛と下痢を予防するためには、日常生活での心がけが重要です。ここでは、効果的な予防法と注意点をご紹介します。
バランスの良い食生活
消化器系の健康を維持するためには、バランスの良い食事が基本です。以下のポイントを意識しましょう。
- 食物繊維をしっかり摂る(野菜、果物、全粒穀物など)
- 腸内環境を整える食品を取り入れる(発酵食品、プロバイオティクスなど)
- 刺激物の摂りすぎに注意する(辛い食べ物、アルコール、カフェインなど)
- 食事は規則正しく、よく噛んでゆっくり食べる
- 過食を避け、適量を心がける
ストレス管理
ストレスは腸の動きに大きな影響を与えます。効果的なストレス管理法を取り入れましょう。
- 適度な運動を習慣にする
- 十分な睡眠をとる
- リラクゼーション法を実践する(深呼吸、瞑想、ヨガなど)
- 趣味や楽しみの時間を持つ
- 必要に応じて周囲に相談したり、専門家のサポートを受ける
衛生管理
感染性胃腸炎を予防するためには、適切な衛生管理が欠かせません。
- 食事の前やトイレの後は必ず手を洗う
- 食材は十分に加熱する
- 調理器具は清潔に保つ
- 生肉と他の食材は分けて調理する
- 外食時も店の衛生状態に注意する
体調変化への早めの対応
体調の変化に敏感になり、早めの対応を心がけましょう。
- 軽度の症状でも無理をせず休息をとる
- 水分をこまめに補給する習慣をつける
- 慢性的な症状がある場合は早めに医師に相談する
- 持病がある場合は定期的な通院を欠かさない
これらの予防法を日常生活に取り入れることで、腹痛と下痢のリスクを減らし、消化器系の健康を維持することができます。ただし、個人によって体質や状況は異なりますので、自分に合った方法を見つけることが大切です。
まとめ:腹痛と下痢の同時発症に対する理解と対策
腹痛と下痢が同時に起こる原因は多岐にわたります。食べ過ぎや飲み過ぎ、食中毒などの食事関連の原因、ストレスや自律神経の乱れ、感染症、そして過敏性腸症候群や炎症性腸疾患などの消化器系疾患が主な原因として挙げられます。
症状が現れた際の対処法としては、まず楽な体勢を見つけ、お腹を温めることが効果的です。水分補給を十分に行い、消化に優しい食事を心がけましょう。症状が軽度で原因が明らかな場合は、市販薬の利用も一つの選択肢です。
ただし、強い腹痛が続く、高熱がある、血便がある、冷や汗や顔面蒼白を伴うなどの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。特に乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方は重症化しやすいため、早めの受診をお勧めします。
予防のためには、バランスの良い食生活、適切なストレス管理、衛生管理、そして体調変化への早めの対応が大切です。これらを日常生活に取り入れることで、腹痛と下痢のリスクを減らすことができます。
消化器系の健康は全身の健康にも大きく関わります。気になる症状がある場合は、自己判断せず、専門医に相談することをお勧めします。当院では消化器疾患の専門的な診療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
最後に、腹痛と下痢は多くの方が経験する症状ですが、その原因や重症度は人それぞれです。ご自身の体調の変化に敏感になり、適切な対応を心がけることが、健康維持の第一歩となります。
詳しい診断や治療については、浜野胃腸科外科までお気軽にご相談ください。消化器疾患の専門医として、皆様の健康をサポートいたします。
著者プロフィール
浜野 徹也(はまの てつや)
現職
浜野胃腸科外科医院 副院長(2015年就任)
東京女子医科大学八千代医療センター 内視鏡科 非常勤講師
東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 非常勤医師
千葉県がんセンター 消化器内科 非常勤医師
研修・経歴
立川相互病院(初期研修)→東京女子医科大学八千代医療センター(総合救急診療科 → 内視鏡科)
その後、千葉県がんセンターなどで非常勤として消化器内視鏡診療に従事
専門・理念
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本消化器病学会専門医
日本内科学会認定医、
日本胆道学会認定指導医
「胃がん・大腸がんで亡くなる方をゼロにする」をミッションに掲げ、苦痛の少ない質の高い内視鏡検査の普及に努める
活動・社会貢献
20~30代を含む働き盛り世代や女性の大腸がん検診受診率向上にも注力。保育園との提携による検診の受診促進や、鎮静剤を用いた安心できる検査環境を提供
メッセージ
医師として「命を預かる責任」を、経営者としては「スタッフの生活を支える責任」を常に胸に刻み、「筋が通る人であり続ける」ことを信条に、日々成長を目指しています


