内視鏡検査
胃痛が続くときは何科を受診すべき?〜適切な診療科選びと受診のタイミング

胃痛が続くときの不安と受診科選びの重要性
胃の痛みは誰もが一度は経験する身近な症状です。「食べすぎたかな」「ストレスかも」と軽く考えて様子を見ることも多いでしょう。しかし、痛みが長引くと次第に不安が募ってきます。
胃痛が続くとき、どの診療科を受診すべきか迷った経験はありませんか?
消化器内科、内科、外科、あるいは婦人科など、複数の選択肢があり判断に迷うことも少なくありません。適切な診療科選びは早期発見・早期治療につながる重要なポイントです。特に胃痛の場合、その原因は単なる胃もたれから胃潰瘍、さらには胃がんまで多岐にわたります。
私は消化器内科医として長年にわたり、胃痛を訴える多くの患者さんを診てきました。その経験から、適切な診療科選びと受診のタイミングの重要性を痛感しています。
この記事では、胃痛が続くときにどの診療科を受診すべきか、そのタイミングはいつが適切かについて詳しく解説します。胃の不調でお悩みの方の不安を少しでも解消し、適切な医療機関選びのお手伝いができれば幸いです。
胃痛の原因と考えられる病気
胃痛といっても、その原因はさまざまです。軽度なものから重篤な疾患まで幅広く考えられます。まずは主な原因と考えられる病気について見ていきましょう。
胃痛の原因として最も多いのは、食生活の乱れやストレスによる「機能性ディスペプシア」や「急性胃炎」です。これらは一時的な症状であることが多く、生活習慣の改善や市販薬で対応できることもあります。
しかし、以下のような病気が隠れている可能性も忘れてはいけません。
- 胃炎(急性・慢性):胃の粘膜に炎症が起きている状態
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:胃や十二指腸の粘膜がただれる病気
- 逆流性食道炎:胃酸が食道に逆流して炎症を起こす状態
- 胃がん:初期症状が乏しいことも多く、進行すると胃痛や体重減少などが現れる
- ピロリ菌感染:胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因となる細菌感染
私の臨床経験では、「単なる胃もたれだろう」と思っていた症状が、実は早期の胃がんだったというケースも少なくありません。特に50歳以上の方は、胃痛が続く場合は一度専門医による検査を受けることをお勧めします。
胃痛の特徴や随伴症状によって、考えられる病気も変わってきます。例えば、空腹時に痛みが強まる場合は十二指腸潰瘍、食後に痛みが出る場合は胃潰瘍や胃炎の可能性が高くなります。
また、胃痛と一緒に黒い便や血便が見られる場合は、消化管出血の可能性があり、緊急性が高いと言えます。このような症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。
胃痛が続くときに受診すべき診療科
胃痛が続く場合、まず受診を検討すべき診療科は「消化器内科」です。消化器内科は、胃や腸、食道、肝臓、膵臓などの消化器系の臓器を専門的に診る診療科です。
胃痛の原因の多くは消化器系の問題であるため、消化器内科医が最も適切な診断と治療を提供できる可能性が高いのです。
消化器内科では、問診や触診による初期診断に加え、必要に応じて内視鏡検査(胃カメラ)や超音波検査、CT検査などの画像診断を行います。特に胃カメラ検査は、胃の内部を直接観察できるため、胃炎や胃潰瘍、胃がんなどの診断に非常に有効です。
しかし、地域によっては消化器内科を標榜していない医療機関もあります。その場合は「内科」を受診しましょう。内科医が初期診断を行い、必要に応じて消化器内科の専門医がいる医療機関を紹介してくれます。
また、「胃腸科」や「消化器科」という名称で診療している医療機関もあります。これらも消化器内科と同様に、胃腸の症状を専門的に診る診療科です。
ただし、女性の場合、下腹部痛が婦人科系の問題から生じていることもあります。月経周期に関連して痛みが出る場合や、おりものの異常を伴う場合は、婦人科の受診も検討すべきでしょう。
胃痛が激しく、立っていられないほどの痛みや、吐血、黒い便など緊急性の高い症状がある場合は、迷わず救急外来を受診してください。時間外でも対応可能な救急医療機関を選ぶことが重要です。
胃痛で病院に行くべきタイミング
胃痛を感じたとき、すぐに病院に行くべきか、それとも様子を見ても良いのか判断に迷うことがあります。ここでは、受診のタイミングについて具体的に解説します。
以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診すべきです:
- 冷や汗が出るほどの強い胃痛がある
- 立っていられないほど痛みが激しい
- 吐血や黒い便(タール便)がある
- 胃痛に加えて高熱がある
- 嘔吐を繰り返している
- 胸痛を伴う胃痛がある
これらの症状は、消化管出血や穿孔(胃や腸に穴が開いた状態)、急性膵炎など、緊急性の高い疾患のサインかもしれません。時間外であっても救急外来を受診することをためらわないでください。
一方、以下のような場合は、なるべく早めに受診することをお勧めします:
- 胃痛が1週間以上続いている
- 痛みは強くないが、頻繁に繰り返す
- 胃痛に加えて体重減少がある
- 食欲不振や胃もたれが続いている
- 市販薬を飲んでも改善しない
- 50歳以上で初めて胃痛を経験した
これらの症状は、慢性胃炎や胃潰瘍、機能性ディスペプシア、あるいは早期の胃がんなどの可能性があります。緊急性は高くなくても、早めに専門医の診断を受けることで、適切な治療を開始できます。
特に50歳以上の方が初めて胃痛を経験した場合は、胃がんのリスクが高まる年齢でもあるため、一度検査を受けることをお勧めします。
胃痛が軽度で、原因が明らかな場合(例:暴飲暴食後、強いストレス後など)は、まず生活習慣の改善や市販薬での対応を試みても良いでしょう。しかし、2週間程度経過しても症状が改善しない場合は、やはり医療機関を受診すべきです。
胃痛の受診前に知っておきたいこと
医療機関を受診する前に、いくつか知っておくと役立つポイントがあります。これらを押さえておくことで、より効果的な診察を受けることができるでしょう。
症状を詳しく記録しておく
医師の診断をスムーズにするため、以下のような情報をメモしておくと良いでしょう:
- いつから症状が始まったか
- 痛みの場所(みぞおち、左右の脇腹、下腹部など)
- 痛みの性質(鈍痛、刺すような痛み、締め付けられるような痛みなど)
- 痛みが強くなる状況(食後、空腹時、夜間など)
- 随伴症状(吐き気、嘔吐、下痢、便秘、発熱など)
- 服用している薬(胃薬、痛み止め、その他の常用薬)
これらの情報は、医師が適切な診断を下すための重要な手がかりとなります。特に痛みのパターンは、病気の種類を推測する上で非常に参考になります。
検査の心構え
胃痛の原因を調べるために、内視鏡検査(胃カメラ)が必要になることがあります。胃カメラと聞くと不安に感じる方も多いですが、現在の内視鏡検査は昔に比べて格段に苦痛が少なくなっています。
多くの医療機関では、鎮静剤を使用した「眠ってできる内視鏡検査」や、鼻から挿入する「経鼻内視鏡」など、患者さんの負担を軽減する方法を提供しています。検査に対する不安がある場合は、事前に医師に相談してみましょう。
私が院長を務める浜野胃腸科外科医院では、患者さんの不安を取り除くため、眠ってできる内視鏡検査や最新の機器を用いた検査など、さまざまな工夫を行っています。検査の環境や方法について事前に確認することで、不安を軽減できるでしょう。
保険証と紹介状の準備
医療機関を受診する際は、健康保険証を忘れずに持参しましょう。また、大学病院などの大きな医療機関を受診する場合は、かかりつけ医からの紹介状があると受診がスムーズになります。
紹介状がない場合でも受診は可能ですが、初診料とは別に「選定療養費」が必要になることがあります。事前に医療機関のホームページなどで確認しておくと良いでしょう。
胃痛に対する日常生活での対策
医療機関を受診する前や、診断を受けた後の日常生活でも、胃痛を和らげるためにできることがあります。ここでは、胃痛に対する日常生活での対策について紹介します。
胃痛の原因が食生活やストレスにある場合、生活習慣の改善だけで症状が軽減することもあります。以下のポイントを意識してみましょう。
食生活の見直し
- 規則正しい食事時間を心がける
- よく噛んでゆっくり食べる
- 脂っこい食事や刺激物(辛いもの、酸っぱいもの)を控える
- アルコールやカフェインの摂取を減らす
- 寝る直前の食事を避ける
特に胃酸の過剰分泌が原因の場合、胃酸を刺激するような食品(コーヒー、柑橘類、トマト、チョコレートなど)を控えることで症状が改善することがあります。
ストレス管理
胃は「第二の脳」とも言われるほど、精神状態の影響を受けやすい臓器です。ストレスが胃痛の原因になることも少なくありません。
- 十分な睡眠をとる
- リラックスする時間を意識的に作る
- 軽い運動や散歩を日課にする
- 深呼吸やストレッチなどでリラックス
ストレスを完全になくすことは難しいですが、上手に付き合う方法を見つけることが大切です。
市販薬の適切な使用
軽度の胃痛であれば、市販の胃薬で対応できることもあります。ただし、以下の点に注意しましょう:
- 症状に合った薬を選ぶ(胃酸過多、胃もたれ、胃痛など)
- 用法・用量を守る
- 2週間以上症状が改善しない場合は医療機関を受診する
- 他の薬を服用している場合は、薬剤師に相談する
市販薬はあくまで一時的な対処法です。症状が長引く場合や、繰り返し発生する場合は、根本的な原因を調べるために医療機関を受診することをお勧めします。
まとめ:適切な診療科選びで早期発見・早期治療を
胃痛が続く場合、まず受診すべき診療科は「消化器内科」です。消化器内科では、胃カメラなどの専門的な検査を通じて、胃炎や胃潰瘍、胃がんなどの正確な診断が可能です。
受診のタイミングについては、強い痛みや吐血、黒い便などの緊急性の高い症状がある場合はすぐに、それ以外でも1週間以上続く胃痛や、市販薬で改善しない症状がある場合はなるべく早めに医療機関を受診しましょう。
胃痛の多くは生活習慣の改善や適切な治療で改善します。しかし、中には胃がんなどの重大な病気が隠れていることもあります。特に50歳以上の方は、胃痛を軽視せず、一度専門医による検査を受けることをお勧めします。
私たち浜野胃腸科外科医院は、千葉県八千代市の八千代緑が丘駅から徒歩1分の場所にある消化器疾患専門のクリニックです。胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査に特に力を入れており、患者さんの不安を取り除くためのさまざまな工夫を行っています。
胃の不調でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。適切な診断と治療で、あなたの健康をサポートいたします。
胃の健康は全身の健康の基盤です。「少し様子を見よう」と放置せず、気になる症状があれば早めに専門医に相談することが、健やかな毎日を送るための第一歩となるでしょう。
詳しい情報や予約方法については、浜野胃腸科外科医院のホームページをご覧ください。
著者プロフィール
浜野 徹也(はまの てつや)
現職
浜野胃腸科外科医院 副院長(2015年就任)
東京女子医科大学八千代医療センター 内視鏡科 非常勤講師
東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 非常勤医師
千葉県がんセンター 消化器内科 非常勤医師
研修・経歴
立川相互病院(初期研修)→東京女子医科大学八千代医療センター(総合救急診療科 → 内視鏡科)
その後、千葉県がんセンターなどで非常勤として消化器内視鏡診療に従事
専門・理念
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、
日本消化器病学会専門医、
日本内科学会認定医、
日本胆道学会認定指導医
「胃がん・大腸がんで亡くなる方をゼロにする」をミッションに掲げ、苦痛の少ない質の高い内視鏡検査の普及に努める
活動・社会貢献
20~30代を含む働き盛り世代や女性の大腸がん検診受診率向上にも注力。保育園との提携による検診の受診促進や、鎮静剤を用いた安心できる検査環境を提供
メッセージ
医師として「命を預かる責任」を、経営者としては「スタッフの生活を支える責任」を常に胸に刻み、「筋が通る人であり続ける」ことを信条に、日々成長を目指しています


